我々の意識は、日々繰り返される自動的な思考の反芻と、未だ言語化されぬ感情の奔流に支配されている。その混沌(カオス)に秩序を与え、自己の内面を客観的に記述する「技法」、それがジャーナリングである。
本講座は、仏教のヴィパッサナー瞑想を実践的背景に持つ著者が、その智慧を現代的な「自己対話のメソッド」として再構築したものである。その核心は、単に内面を癒やすことにあるのではない。「書く・読む」という物理的行為を通じた、徹底的な「メタ認知(対象化)」の喚起にある。
浮遊する思考を紙上に固定(可視化)し、それを読み返すプロセスがもたらす恩恵は、個々の内的状況によって多層的に現れる。
ある段階にいる者にとっては、複雑に絡み合った認知の糸を解きほぐす「思考の整理」として。あるいは別の者にとっては、形を持たないもやもやとした焦燥の輪郭を捉え、霧散させる「精神的カタルシス」として機能するだろう。
さらに、対話と深掘りの循環を繰り返す中で、より深い深淵へと至る者もいるかもしれない。それは、無自覚に繰り返される反応パターンや認知バイアスが白日の下に晒される瞬間──すなわち「無意識の意識化」である。
日常的な思考の整頓から、人生のパラダイムを変容させる自己認識に至るまで。その歩みや深度は人それぞれ異なるが、本講座は、書くことによって思考の自動反応から脱し、自らの内面に静けさと主体性を取り戻すための、実践的かつ広範な階梯(かいてい)を提供するものである。